博物館学課程科目

生涯学習概論

生涯学習及び社会教育についての基礎的な理解を図ることを目標とし、生涯学習の意義・概念(「私の学習史」と自己形成/生涯教育論の生成と展開等)、生涯学習に関する法律・制度(教育関連法の概要/社会教育行政・施設の仕組みと役割等)、社会教育専門職員の役割(社会教育主事・司書・学芸員・公民館主事の基本的職務と現状/生涯学習支援の理論と方法等)、生涯学習社会の構築(生涯学習を支援する主体の多様化/家庭・学校・地域の連携/生涯学習振興施策の展開等)、を中心に学習する。

なお、本授業では、博物館に関する内容についても学習する。

博物館資料論

博物館には「物」すなわち資料が不可欠である。「物」がなければ博物館とはいえない。博物館に多くの種類があるように、博物館資料もまた実に多様である。博物館資料の多様性が、博物館の多様性と個性を生み出しているともいえる。そうした中で、博物館資料は通常の家屋等にある「物」とは異なる理念と目的の下で、通常とは全く異なる取り扱いがなされる。

多様な博物館資料について、その種類を把握したうえで、それぞれの資料が博物館の中で調査・収蔵・展示される目的や理念を理解し、さらにはそれぞれの資料を適切に取り扱うための最も基本的な知識と技術を学ぶ。このことは、翻って博物館のもつ本質的な役割を逆照射するものであり、これ以降学芸員資格のために取得していくこととなる各論への足掛かりともなるものである。

博物館教育論

博物館法が教育基本法や社会教育法をベースとして法整備されてきたことからも明らかなように、博物館はそもそも社会教育を推進する公的施設としての役目を負っている。特に近年は、学校教育以外の教育・学びの場の重要性が増しており、その最もふさわしい公的施設の1つとして、博物館のもつ教育的機能の重要性は益々大きなものとなってきている。

博物館活動に内在している教育的機能、すなわち生涯学習の場としての博物館、コミュニケーションの場としての博物館などの側面を詳しくみていくことで博物館教育の理念と意義について考える。そして、博物館における学びや体験の実態について事例を交えて学習することで、博物館で行われる教育活動の企画や手法の理解に努める。また、学校教育との関係、ボランティア活動、地域社会との関係など、博物館の外にも視野を適宜広げてみることで、博物館における教育活動の基盤となる理論や実践に関する知識・方法を幅広く習得する。

博物館資料保存論

収集した資料を未来に残すため、しっかりと保存し、必要に応じて修理等を施すことは、博物館における最も基本的かつ重要な業務の1つである。博物館は、未来への重い文化的責務を負っているともいえる。この博物館資料の保存と修理は、私たちが日常生活で用いる物の保存や修理とは根本的に異なっており、専門的かつ深い知識と慎重かつ厳格な技術が不可欠となる。

資料の現状把握から展示、修理、梱包・輸送、さらには資料の保存環境(温湿度やIPMから災害対応まで)、修理などの知識を総体的に学ぶことで、博物館における資料保存の意義を科学的に理解することを目指す。また、地域資源・文化財や自然環境の保護(エコミュージアム等)と博物館の役割にも適宜目配りすることで、資料の保存・活用・管理の現場に貢献できる基礎的な能力を養う。

博物館展示論

博物館活動において展示は、一般の方々と博物館とが接触する、最も一般的な場(機会)である。それは一般社会からみれば博物館の顔でもある。そして、博物館と社会との間の強固な懸け橋である展示は、博物館が担う資料保存や調査研究といった役割の成果を公開する場として、博物館活動の「現在」を伝える機能を果たしている。展示機能をもたない施設は、博物館とは呼べないだろう。博物館の展示は、公的機関としての博物館の設置目的と深く関わっており、店舗やイベント等の単なるディスプレイとは意味合いを異にする。そのため、展示には、資料保存や社会教育等にも配慮した専門的な知識と技術が必要となる。

コミュニケーション手段としての展示、展示の政治性や社会性、展示と調査研究などといった博物館展示の本質と課題について触れるとともに、展示の種類や制作の現場、演示具類の工夫、展示評価、展示更新など博物館展示の実際についても事例を交えて学ぶ。さらに、展示解説や展示図録,パンフレットの効果などについても学習することで、博物館展示に関する理論と方法を総体的に習得する。

博物館経営論

近年、博物館をめぐる状況は大きく変わりつつある。博物館は、資料を保管・展示する公的施設であるが、同時に生涯学習・社会教育施設としての役割が日増しに増大しており、さらには地域活性化の拠点、そして観光施設としての期待も高まっている。こうした期待にいかに応え、また設置目的を達成できるか、さらにはそれを客観的に示せるかは、博物館の運営・経営における大きな課題であり、博物館活動の中心にいる学芸員1人1人にも決して無縁なことではない。今や学芸員も博物館経営に関する一定の知識と理解をもつことは必須である。

行財政制度や財務、施設設備、職員組織などの面から博物館経営(ミュージアムマネージメント)とは何かについて考えることで、博物館の経営基盤の実際を知る手掛かりとする。そのうえで、博物館の使命を踏まえつつ、倫理(行動規範)や危機管理、広報(マーケティング)などの理念について検討する。また、ミュージアムショップやレストラン等の民間業者との連携、市民の参画、博物館ネットワーク、他機関(大学・協会等)との連携、さらには地域社会や行政との連携といった多角的な運営実態にも適宜目配りすることで、博物館の形態面と活動面における適切な管理・運営についての知識と理解を深める。

博物館情報・メディア論

博物館の柱となる活動は、収集(寄贈、寄託、購入等)した資料を整理・調査しつつ、しっかりと管理し、必要に応じて展示・公開等に適切に活用していくことにあるが、今日そのどの段階においても情報に関する一定の知識と理解は不可欠となっている。さらに、日々発達・更新される膨大な情報を適切に処理しつつ、メディアを積極的に利用していくことは、資料の取り扱いのみならず、博物館そのものの活動や運営にまで関わる重要な業務となりつつもある。情報・メディアを適切に管理・運用できる博物館こそが、従来とかくイメージされがちな内向きの「静」の施設から脱し、現代社会で求められる外向きの「動」の施設として展開していく道筋といってよい。

こうした状況下にある博物館の役割や方向性について、特に情報・メディアという切り口からみていくことで、今後の課題や可能性について考える。博物館における情報・メディアの意義や理論を学びつつ、具体的な事例なども交えながらデータベース化、デジタルアーカイヴ、バーチャルミュージアム、情報の保護と共有、データを介した連携や災害対応、情報発信・公開、さらには知的財産権等の権利の問題など、多方面から検討する。

情報・メディアに関する基本知識を身につけると同時に、その意義をしっかりと理解することで、現場で使える基礎的な能力を養う。日々アップデートされる情報・メディア技術に対応できるよう、原理原則を理解し自分の頭で解を模索する力を錬成する。

博物館実習A

博物館及び学芸員の活動は、身につけた知識や思想、技術を実際の現場で適切に発揮できてこそ意味がある。本講義では、「学内実習」「見学実習」を適宜組み合わせることで、博物館の実務に対する理解を深めることを目指す。

「学内実習」では、資料の収集から清掃、整理、保存、展示など取り扱いの技術を総合的に修得する。「見学実習」では、他の博物館のバックヤード(研究室、収蔵庫、作業室、燻蒸庫など)や展示室を学芸員の案内で見学するとともに、場合によっては資料整理等の支援も行い、業務の多様性と責任を深く理解する。

博物館実習B

博物館及び学芸員の活動は、身につけた知識や思想、技術を実際の現場で適切に発揮できてこそ意味がある。本講義では、「館園実習」として実際の博物館に出向き、2週間程度、現場の学芸員の指導のもと博物館の実務を行う。事前および事後の学習と「館園実習」を組み合わせる形で行い、現場に必要な技術や知識を高め、学芸員としての資質を養う。