変化する時代に必要な原点回帰という視点

近年、我が国では少子高齢化による人口減少や価値観の多様化など、社会や個人の考え方が大きく変化しつつあります。そうしたなか、これからの私たちはどうあるべきか?民俗学的な発想をすると、人々の考え方や行動のあり方が見えてきます。

変遷を読み解くことが解決の糸口に

少子高齢化などの影響によって担い手が不足し、お祭りの開催が危ぶまれている地域があるといいます。お祭りは歴史の流れの中で変化しながら現代に受け継がれていますが、日本の人口が3000万人ほどの江戸時代ではどのように催されていたのか?さらに、それ以前のもっと人口が少ない時代はどうしていたか?その変遷を辿ることでおのずと答えが見つかるはずです。これが、民俗学的な発想です。人口減少に留まらず、現代社会は様々なことが変化しています。現状維持に固執するばかりではなく、これまでの変遷を見つめながら原点回帰する視点をもつことも大切なのです。

地域コミュニティの創出や地域伝統としてのお祭りを維持・継承していくことは、少子高齢化などが進む現代社会の課題でもある。

先人たちの価値観を見つめ直すことの大切さ

かつての人はどのような生きがいを抱いていたのでしょうか。たとえば現代にも受け継がれる数々の人生儀礼。お七夜、お宮参り、七五三…そして婚礼、亡くなってからは誕生のときと同様に初七日、四十九日、三・五・七回忌…といった諸儀礼があり、やがて弔い上げとなって故人は祖霊となり、そして再びこの世に生まれかわってくる。こうした循環的な日本人の生死観を読み解いていくと、先人たちの生きがいとは家の永続、子孫を絶やさないことだと見えてきます。子供や家族、そして地域に思いを馳せる私たちの行動原理には、積み重ねられてきた慣習が大きく左右しています。過去を簡単に切り捨てるのではなく、過去を振り返り、今に活かすことを考える。このことは、私たちの「これから」を模索していくうえでも大切な視点となるはずです。

人は折ふしにあたり、様々な儀礼を段階的に経ていくことによって、徐々にその存在や立場を社会的に知らしめていく。こうした諸儀礼を人生儀礼という。

歴史という大きな流れの中で現代社会を考えることが、日本人にとっても地域にとっても重要な視点となる

【教員プロフィール】
小林 稔 教授

民俗学、文化財学、博物館学

【小林先生の関連コラム】
SCOOP OF まちづくり一覧へ