都市部の夏祭りが盛大な理由とは?

地域に受け継がれてきたお祭りや伝統行事、生活様式や風習は、地域の宝であり貴重な観光資源にもなりえます。このような伝統文化の存在意義を理解することではじめて、地域として納得できる観光まちづくりのあり方が見えてきます。

お祭りは私たちの身近な文化

日本人にとって欠かせないお祭り。大きく分けると、豊作祈願と収穫を感謝する祭りが春と秋の祭り、災いを防除するのが夏の祭りです。そのため、春・秋と夏とでは、お祀りする神様が異なります。農村部では収穫に影響する春・秋祭りを重視する地域が多く、都市部では京都の祇園祭、東京の三社祭などのように災いを防除する夏祭りを盛大に催すことが多いのが特徴です。もちろん、これ以外にも全国各地に様々な祭りが存在します。そのお祭りがどのような変遷を経て現在に受け継がれてきたのか、民俗学の観点から考察すると、地域の特性やその地域に暮らしてきた先人たちの価値観などが見えてきます。

山から降臨される神様にその年の収穫を祈願する春の田植え祭り。神様は秋の収穫までその地域を見守ってくれる。

文化財である前に地域の財産であること

有形・無形を問わず、文化財として位置付け、保護していくという制度があります。地域に伝わる祭礼行事などは無形の民俗文化財に相当します。しかし、文化財指定というのはあくまでも行政行為であり、指定した時点で公共性が発生します。したがって、秘匿性の高い秘儀や宗教法人自体の行為、あるいは危険致死や虐待行為などは対象化されません。つまり、そもそも、あらゆるものが文化財になるとは限らないのです。地域の宝とするのであれば、文化財というよりも、まずは地域として何が大切なのかを真摯に考え、地域の信念や覚悟の問題として捉えていけるのかどうかが重要なのです。そうしてはじめて地域の先行きが垣間見えてきます。

文化財指定は万能薬ではない。確かに観光客の需要増は見込まれるが、その一方では常に公共性が求められるものとして存否が問われることになる。

私たちの暮らしにある身近な文化を通して、地域を見る目、地域を読み解く力を養うのが民俗学

【教員プロフィール】
小林 稔 教授

民俗学、文化財学、博物館学

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