生きものと人の関係性から見えてくる地域の個性

旅先での四季折々の風景やその中で生きる動植物、それらの環境と結びついた人々の暮らしは、地域の個性につながる重要な要素であり、観光客の興味対象にもなります。このことについて、保全生態学的な視点から考えます。

地域の個性につながる生物の固有性

外来生物による生態系のかく乱が問題となっています。本来生息していない地域に人為的に持ち込まれた生物がもともと生息していた生物を脅かし、生態系に大きな影響を及ぼすことがあるのです。このような生態系のかく乱は、観光まちづくりの場面においても注意が必要です。例えば、まちおこしの一環としてホタルなどを放して楽しむイベント。同じ種であっても生息地によって遺伝的特性が異なることがあり、地域外からの人為的導入は遺伝子レベルでの固有性を損なう結果につながる可能性があります。その地域の個性を支える重要な要素を失うことのないよう、綿密な計画と実施後の継続的モニタリングが欠かせません。

同じ種のホタルでも地域によって遺伝的な違いがある。そのため点滅パターンも地域により異なる。

地域の個性を守る保全生態学的な視点

生きものは、地球の長い歴史の中でさまざまな環境に適応しながら進化し、多様な種へと分化を遂げてきました。地域の生態系は、そこに生きる生物群集とそれらを取り巻く非生物的な要素、さらにそれら相互の関係性全体を指します。珍しい動物や美しい花だけでなく、こうした生態系そのものが地域の個性を表す重要な要素であり、人々の生活と結びついた豊かな景観や心地よい雰囲気を生み出すことにもつながります。地域の個性につながる生態系、それを支える生物多様性を見つめ、保全と持続可能な利用について考える保全生態学的な視点が重要になります。

家屋と河川、水田、背後の山林が一体となった風景。人々の営みが生態系と結びついている様子が見て取れる。

地域固有の生態系を保全することは、観光面で地域の個性や魅力を守ることにもつながる

【教員プロフィール】
堀木 美告 教授

造園学、観光計画、観光行動、観光資源管理

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