地域の素材を使いおもてなしの場をつくる

それぞれの地域によって木材、石、土、鉄などの特性は異なりますが、その特性を景観デザインや施設デザインに活かすことで、地域のストーリーを育み、人々の記憶に残るようなまちづくりを目指した取り組みが各地で行われています。

豪雪地域に佇む、温かな風合いの建物

秋田県は日本を代表する杉産地であり、秋田杉は秋田の宝です。暖かい気候の宮崎の飫肥杉(おびすぎ)は1年で2センチほど大きくなりますが、寒い地域の秋田杉は1年で数ミリほどしか育ちません。その代わり強度があり、美しいピンク色で、目が詰まっていて曲げても割れないことから、「曲げわっぱ」などに使われています。秋田駅西口バスターミナルのデザインでは、この秋田杉にこだわりました。地元を代表する材料を使った空間が、これからバスに乗る人を「行ってらっしゃい」と見送り、帰ってくる人には「お帰りなさい」というメッセージを送る。それが地元のおもてなしとなるのです。

バスターミナルの屋根の垂木に用いた美しい秋田杉の表情。

風景をよりよく見せるデザインを

完成した秋田駅西口バスターミナルはメディアやSNSなどでも話題となり、写真を撮る観光客の姿も多く見受けられ、地域の皆さんからは「地元の誇りになった」という言葉をいただきました。景観デザインや施設デザインをするうえで、美しくデザインすることはもちろん大切ですが、その土地の風景や空気感を阻害するものであってはならず、風景をより魅力的に見せるものをつくること。そして、地場の素材を用い、ストーリーをつくり、地域の記憶に残るものをつくっていく。それが観光まちづくりにも繋がっていくのです。

バスターミナルのベンチは、暖かでやわらかい杉の質感を味わえる大断面の秋田杉を使用している。

地場の素材を活かしたストーリーをつくることが、景観や施設デザインの重要なポイント

【教員プロフィール】
南雲 勝志 教授

公共空間におけるインダストリアルデザインに関する実務、国産木材(杉)を用いたデザインとまちづくりへの展開

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