地域の人にとって愛着がわく橋を

その地域にとってあるべき構造物のデザインとは何か?地域の人々に長く愛されるものとは何か?観光まちづくりにおける景観デザインの重要性や本質について迫ります。

地域の記憶を埋め込む

宮崎県の北部にある延岡市上崎地区に、国道と24戸の集落を結ぶ橋長約200mのアーチ橋が架かっています。この橋の景観デザインを依頼された時に考えたのは、「地域の人たちの記憶をどのように埋め込むか」でした。宮崎県は杉の出荷量が日本一。集落の周りにも杉林は豊富にありました。そこで、皆さんの杉を使用させていただき、みんなで山に入って杉の木を伐り、運び出して加工したものを橋の手すりとして取り付けたのです。高齢者が多く作業はとても大変でしたが、その分、渡り初め式では「自分たちの橋が出来た」と住民の皆さんは感動していました。

住民総出で行われた橋の渡り初め式。自分達が架橋に一緒に関わったことで完成の喜びもひとしおであった。

地域と共に育つ橋

木材は経年劣化するので、この橋の手摺りは人の手で磨くなど定期的なメンテナンスが必要となりますが、毎年、住民の皆さんは自分たちの手で手すりを磨いています。そのおかげで杉の手すりは10年以上経った今でも綺麗につかわれていますし、木材特有の年を経た味わいも現れています。これまで、行政がつくって終わりという公共事業が多い中、地域の人に協力してもらい、地域と共に守り育てながら愛着のわく公共施設をつくる。そのような地域の記憶を埋め込んでいくことが、景観デザインにとって重要なのです。

年に一度、秋に行われる住民達による橋のメンテナンス作業。つくるだけでなく守り続けることでより愛着のある橋になる。

地域住民と共につくり、一緒に育てる取り組みは、これからの公共事業のあり方のヒントに

【教員プロフィール】
南雲 勝志 教授

公共空間におけるインダストリアルデザインに関する実務、国産木材(杉)を用いたデザインとまちづくりへの展開

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