市民の力で危機を乗り越えた柳川の掘割

近代化がもたらした社会の変動は、農村部だけではなく都市部の自然環境にも大きく影響しています。社会の視点から地域における環境の保全と、観光資源としての利用について実際の事例をもとに探ります。

清らかな水のある生活を取り戻す

福岡県の柳川市は、網目のように張り巡らされた掘割が有名な観光スポットです。古くからこの掘割は水路交通や農業用水、生活用水として人々に使われていました。ところが、高度経済成長時の暮らしの変化によって機能の一部が失われ、また、生活排水等が大量に流されたため、悪臭が漂うなどの環境問題が発生。一時は大部分を埋める議論もなされたほどです。しかし、掘割が汚れた原因は人間の側にある、という一人の市役所職員の訴えを聞いた市民たちが、自治体と連携して掘割の再生に立ち上がりました。河川を浄化するために掘割の底面に堆積している泥をさらい、汚水の流入を抑止するなど、住民たちが理解を示し協働したことで当初の計画よりも短期間で水質を改善することができたのです

掘割のゴミを除去する船。市役所と市民の共同による管理が今日でも続けられている。

社会の側から環境を考える

水質改善と同時に進められたのが、堀川沿岸の植栽など緑化の修景や遊歩道の整備でした。こうして柳川の掘割のある風景は現代に残り、今ではゆったりと川下りを楽しめる地域の貴重な観光資源となっています。自然は勝手に汚染されるものではなく、住民のライフスタイルの変化や人間社会の変化を映す鏡のようなものです。社会の側から環境について考えてみると、よりよい地域社会とは何か、地域の環境を守るためにどのような関係作りが求められているのかなど、今後の持続可能な社会の実現に向けた課題も見えてきます。

柳川の観光といえば川下り。どんこ舟に乗って約1 時間の船旅を楽しむ。

地域における環境の保全と利用については、行政だけではなく住民の理解と協力が重要になる

【教員プロフィール】
松本 貴文 准教授

農村社会学、地域社会学

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